※伊那分室・機器分析支援センターでは、スタッフが質量分析を受託しています。
質量分析は構造解析や有機合成物の確認など、幅広い分野で用いられている基礎的な分析技術です。対象物質を何らかの方法でイオン化し、検出器に導入することで、その分子の質量数(実際にはプロトン付加状態などのm/z値)を得ます。最近では、自動化され操作が簡便な装置が多いものの、すべての物質に適したイオン化法はなく、適切なイオン化法と検出器の組み合わせを選択する必要があります。その点、農学部に設置されている装置は、適用範囲の広いFABイオン化法が行なえる古き良き装置です。年間に何百点も分析を行っている施設では、現在でも年に2~3件はFABでなければイオン化できない物質の測定依頼があるそうです。ダイオキシン分析用以外のFAB装置は生産中止になってしまいましたが、現在でも度々分析講習会が実施されるなど、まだまだ現役で頑張っています!
FAB法ではイオン化しやすくするためにマトリックスと呼ばれるイオン化補助剤とサンプルを混ぜて装置に導入します。マトリックスは、イオン化しやすく、かつサンプルに影響が少ないものとして主に使われる種類がいくつかあります。また、イオン化は分子の持つ電気的な性質により、ポジティブ(+)とネガティブ(-)の2つのモードがあり、これらの組み合わせが重要です。依頼時や結果を受け取ったときの参考になるかと思いますので、主なマトリックスと測定モードについてご紹介します!
ファーストチョイス:3-NBA(3-ニトロベンジルアルコール)
何はともあれ、FABマトリックスのファーストチョイスはNBAです。特にNを含む物質に適しています。ただ、ネガティブが出にくい場合があるので、その際には、ネガティブ用のマドリックスを選択することになりますが、NBAでそのままネガティブも測定できてしまうことも少なくありません。測定結果を確認する際は、以下のサイトからNBAのピークを確認し、差し引いてください。
セカンドチョイス:DEA (ジメタノールアミン)
ネガティブモードでの測定に威力を発揮するのがDEAです。逆にポジティブはあまり得意ではありません。
サードチョイス:Glycerol (グリセロール)
こちらも汎用性の高いマトリックスです。NBAではピークが見えず、Nを含まない物質などでグリセロールを試しています。
どんなマトリックス・モードを選ぶかで結果が大きく変わってきます。選び方がわからない場合は、まずはスタッフにご相談ください。実はスタッフもわからないことが多いのですが、その場合はピークが見えるまでマトリックスとモードの組み合わせを変えて測定していく総当りを行ない、事例を蓄積しています。
参考HP
Mass Bank http://www.massbank.jp/Search
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